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「力量」と「品格」

その七十七
「力量」と「品格」について

 前回は、「私の好きな言葉」(『剣道時代』昨年12月号掲載)の補足説明をさせていただきました。
その言葉、「兵法の利にまかせて、諸芸・諸能の道となせば、万事におゐて、我に師匠なし」、の中で「兵法の利」についての「利」を、 <ここではこの「利」を「理」と同義ととらえます。ほんらい「利」と「理」は同音異義語です。一般的に「利」は、都合のよいこと、役に立つ、という意味で「功利」「利に走る」といった使われ方をされます。それに対し「理」の方は、物事の筋道、ことわり、という意味で「理法」「理に適う」といった使われ方をします。しかし実利主義者でもあった武蔵は、あえて「利」の文字を使って「理」の含みをも持たせたものと解せます。>としました。

 では、なぜここで「利」と「理」が〝同音異義語〟であることを殊更に強調したかお気づきでしたでしょうか。

 いま一度、本剣連のホームページ「トップ」欄をご覧ください。

 そこに「基本理念(一人ひとりが「道」を求め)」を記し、末尾に剣道修行の要諦「三本柱」をお示ししていますが、その一番目に〝利を追わず理にしたがう〟と掲げています。

 この「基本理念」においては、「利」と「理」に相対する観念をもたせ、目先の「利」ではなく「理」に適った修錬を目指すこととしています。

 「利」の用法については、先ほどの「功利」や「利に走る」の他にも、「利にさとい」「漁夫の利」というような余り好ましくない使われ方のほうが多いのですが、一方では、「利口」「利発」「鋭利」また「利剣」など褒め言葉として「利」が用いられることも少なからずあるわけです。

 わが方の「基本理念」においては「利」と「理」を対比させ、一方「私の好きな言葉」では「利」と「理」を同義としていますが、ここは思索上の使い分けでありまして、決して筆者の裡に矛盾をはらむものではありません。

 「理」が「利」と合わさらなくて、たんに無垢なる上達論をもってしては骨肉相食(あいは)む幾多の戦いに生き残っていくことはできない—— 武蔵の境涯とはそのようなものであったとご理解ください。

 「利」と「理」についてはこれで置くとしまして、これと類比的にしばしば論じられるものに「力量」と「品格」の問題
があります。

 このたび大相撲初場所(両国国技館)で、白鵬が大鵬を抜いて単独史上最多33度目の優勝を成し遂げました。白鵬はこの場所全勝で優勝を飾ったのですが、実質の優勝は13日目(1月23日)対稀勢の里戦の結びの一番で、取り直しにもつれ込んだ末に決まりました。

 この一番は、白鵬が寄って出た、土俵際で稀勢の里が小手投げを打った、軍配は白鵬に上がる。が、物言いがつき、同体と見なされ取り直しとなった。取り直しでは、白鵬が稀勢の里を押し倒し優勝を決めた、というものです。

 ところが取り直しとなったことについて白鵬は、翌日の会見で、「勝ってる相撲。子供が見ても分かる」「元お相撲さんでしょ」「もう少し緊張感を持ってやってもらいたいね」などと審判部を批判しました。

 これについて批難の声が上がり、また擁護論が現れたりと一大騒動が巻き起こりました。

 このことについては皆さんもご承知のことでしょうからこれ以上のことは申し上げません。また筆者は、このことについて批難、擁護どちらに与するものでもありません。

 この度の優勝記録は、白鵬が師と仰ぎ敬愛してやまない大鵬関を抜いての快挙でした。が、この大鵬にも審判に苦い思いをさせられた旧い出来事があります。
 それは昭和44年(1969年)3月場所(大阪府立体育会館)のことです。大鵬は、初日に勝って双葉山(69連勝)に次ぐ45連勝を記録しました。しかしこの連勝記録は、あえなく翌2日目の戸田(東前頭筆頭)戦に敗れたため45でストップしてしまいます。

 ところがです。ビデオ映像や写真を見ると戸田の足が先に出ていたことが判明しました。明かな誤審です。
 にも関わらず判定は覆ることはありません。もし、正しく判定が下され大鵬の勝ちとなっていれば、双葉山に追いつき追い越し、新記録が生まれる可能性も秘めていたのに、と、多くの相撲ファンを落胆させました。

 相撲界では、「世紀の大誤審」と問題になり、この翌場所からビデオ画像の導入が始まったとされています。
 ところが、です。「ビデオで見ると相手の足が先に出ていた」と伝えられた当の大鵬は、「横綱がそういう相撲を取ったのが悪い」と言ったとされています。

 うむぅ、なんという違いか!

 こういったとき人間の「力量」と「品格」の問題が取り沙汰されるのですが、取り直しとなったことで審判を批判した白鵬と、明かな誤審で負けたにもかかわらず「自分がそう見られたのが悪い」とする大鵬の言、いかが思われますか。

 大鵬は、長く一緒に暮らす夫人の芳子さんにも、勝負判定に不満を述べることなど一切なかったそうです。
 大鵬幸喜さんは、1年前の初場所の最中に72歳で亡くなられますが、その直前までずいぶん白鵬のことを気にかけておられたとのこと。
 さて大鵬関、草葉の陰でこの相撲界の顛末をどのようにごらんのことでしょう。つづく

                                                            平成27年2月10日

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新宿区剣道連盟

Author:新宿区剣道連盟
「井蛙剣談」への思い

 「井の中の蛙大海を知らず」と自覚しつつ
「井の中は誰よりも知っている蛙」に成り代わり書き進めてまいります
つたなき指導の一環とお受け止めいただければ幸いです
               真砂 威

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