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心すべきこと

その二十三

戦前わが国では、国家総動員体制のもと、武道が一般スポーツ・体育より優遇されていたことは前回述べました。
 そして国中が〝鬼畜米英〟と敵愾心をあらわにするなか、英語は軽佻浮薄(けいちょうふはく)な〝敵性語〟として位置づけられ、いちいち日本語に翻訳して言い換えるということが行われていたようです。

 当時も国民の間で親しまれていた野球は、アメリカの国技だとして排斥が進められたといわれています。今も語り伝えられているように、野球用語のボールが「だめ」、ストライクが「よし」というように言い換えて使っていたというのは本当のようです。
少なくとも表向きは…。

 その点、武道には外来語は一つも出てきません*。ここが武道を優遇したもう一つの理由と言えるのでしょう。
 英語を日本語に言い換えるようになった経緯の一つにこのようなことがあったと聞きます。
 政府は、武道の物資予算についてかなり優遇したが、スポーツに対しては冷たくあしらった。体育関係者が、「なぜ武道ばかり優遇するのですか?」と詰め寄ると、官憲は、「スポーツは外来のものだからいけない」との返事が返ってくる。そこで体育関係者が、「飛行機も軍艦も外来のものじゃないですか」と反論すると、官憲は、「それらはちゃんと日本語に翻訳してある、君たちは外来の言葉のままでやっているじゃないか!」と一蹴された。
 「それじゃ」ということで、すべて日本語に言い換えることとなったとか…。

 戦後、武道特に剣道は学校や警察おいて全面禁止されるなど活動に著しい制限が加えられ、反対にスポーツが奨励されるといった逆転現象が起こります。これはアメリカの占領政策であったことは確かでしょう。
 しかし、それだけではなく、戦前冷遇を受けた体育関係者はもとより、多くの国民の中から、戦前の武道優遇に対する反発から、〝揺り返し現象〟が起こったのも頷(うなず)けます。

 その後、数年の空白期間を置いて昭和27年(1952年)に全剣連が発足したことは前回述べたとおりです。翌年の昭和28年には文部省により、〝純粋スポーツ〟であることを強調した上で、高校、大学で実施することが認められました。中学校では昭和32年(-57年)に認められることとなります。

 しかしこれは、あくまで選択科目として行うことを認めたのであって、必修科目となったわけではありません。また柔道や剣道や弓道などの総称として、「武道」の名を冠することは許されず、**「格技」という呼び名での再出発でありました。

 雌伏三十数年、次の流れは平成元年に巡って参ります。同年改訂の学習指導要領において名称が「格技」から「武道」と改められ、ここではじめて武道が復権します。
 しかしながら、すわ武道、というわけにはいきません。その後の道のりも険しく、二十数年もの歳月を経て、ようやくこの度の必修化へと漕ぎ着けました。

 誤解のないように申し上げますが、必修化といっても戦前のように、独立した教科として行うのではなく、あくまで体育の一種目に編入されるということです。陸上競技や水泳などに並んで武道が、必修になるということですから、武道が重視されるというより、やっと他のスポーツ並みになったというべきで、決して戦前の状態に戻るというものではありません。

 これは後知恵かもしれませんが、当時、敵性語排除とともにあった武道優遇という措置は、剣道関係者にとって有難迷惑な話であったと思われます。また、敵性語の日本語言い換えという珍奇な現象をどのようにみればよいのでしょう。

 しかし、何でも日本語に言い換えれば済むというものではなかったようです。エンジンは「発動機」に、ポケットは「物入れ」、タオルは「汗拭き」というように置き換えは自由に利くのですが…
 「エンジンの音轟轟(ごうごう)と…♫ 」でおなじみの軍歌『加藤隼戦闘隊』を「発動機の音轟轟と」に言い換えると、まるで勇壮さがなくなってしまい、とうてい力唱できるものではありません。

 また、カレーライスは「辛味入り汁掛け飯」と一応言い換え語がつくられたようですが、これも語呂が悪く〝海軍カレー〟が誇りの海軍では、決してこの言い換えをしなかったとのことです。

 このように敵性語排斥も、現実離れしたものもあり、徹底したものではなかったようです。
 ちょっと余談がすぎましたが、次回は、剣道の戦技化への風潮に、危惧の念を唱えた人たちのことについて述べたいと思います。
つづく

* 現在では、試合・審判規則などで、「メートル」「センチ」「ミリ」「グラム」「ポリカーボネート」「サポーター」「ズボン」「ワイシャツ」「ネクタイ」「チーム」といった外来語が使われています。

** 「格技」という語は、「combative sports」の訳語として誕生させたものです。「武道」という言葉が「military arts」と訳されるものならば、許可されないであろうということで、柔道、剣道などを総称して「格技」という名称を使うことにしたとのことです。

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新宿区剣道連盟

Author:新宿区剣道連盟
「井蛙剣談」への思い

 「井の中の蛙大海を知らず」と自覚しつつ
「井の中は誰よりも知っている蛙」に成り代わり書き進めてまいります
つたなき指導の一環とお受け止めいただければ幸いです
               真砂 威

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