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一本勝負

その十六

10月29日(土)午後5時~6時、新宿スポーツセンター剣道場において*三州会と新宿剣連の合同稽古が行われました。
 稽古のあと永松 陟 範士から、昇段審査のシーズンを迎えるにあたって、受審上のアドバイスをいただきました。
 時にかなった大変参考になる内容でありましたので、稽古に参加されていない方のために、永松先生が述べられました要点を記させていただきます。

 第一に、「つくらない」ということです。
 「審査だからといって恰好を付けてはいけない。そんなつくった借りものでは自分の本領を発揮することはできない。自分の見映えを繕おう思った時点で自分ではなくなってしまう。つくらずに全身全霊を相手に傾けよ。」というような内容でした。

 以下、井蛙の注釈を試みます。
 ご存じのとおり、剣道はわが国の伝統文化であります。そしてわが国の文化は「型の文化」といわれております。
 端的にいえば、まず師匠や先輩方が示した構えや技の形(かたち)を真似(まね)ることから始めます。手本をなぞらえるように、〝そっくり〟となるよう真似るのです。
 それはちょうど溶かした金属を鋳型に流し込むイメージです。習おうとする先生を鋳型に見立て、まるで先生の縫いぐるみに入る感覚というか、先生そのものになりきることです。
 この、型にはまり、形をつくり、やがてその形が習い性(習慣的な行動様式)となる。これがわが国古来から行われてきた技能の伝承と修業のやり方です。
 「学ぶ」という言葉の語源は「真似ぶ」から来たと言われています。
 また、「つくる」には「作る」「造る」「創る」などの漢字があてられるように、技の仕立てに「作」「造」「創」それぞれイメージを膨らませながら稽古に励むことが上達の道と考えます。

 では、永松先生が「つくらない」とおっしゃったのはどういうことでしょうか。
 これには深い意味があります。
 「つくる」という情況は、意識が自分自身の方に向いているということです。その場におよんで自分の形をつくることに心が傾けば武が立ちません。本番では形を忘れ、剣を交えた攻防の中、相手の一挙手一投足に気を配ることが肝心なのです。
 これが永松先生のおっしゃった「つくらない」という意味で、「無心」や「無我」といった奥深い境地をわかりやすく説明されたのであります。
 
 次におっしゃったのは、「一本勝負のつもりで立ち合え」ということです。
 これも意外なお言葉でした。ややもすれば審査は、剣道の本質を問うものであるから、打った打たれたの勝負より、基本に則した姿勢・打突ということが大切である、と考えがちです。
 また、理に適(かな)った攻めのプロセスを践(ふ)むことにより、必然として有効打突が生まれるべしでもあります。
 しかしこの基本や理合が意識に上ってきた時点で、前の「つくる」と同じ状態に陥ってしまうのです。
 このたびの永松先生の教えは、「一本勝負」ということでありますが、ふつう言われている「試合時間○分、1本勝負」といった類の一本勝負という意味ではありません。「ただ一本に勝負をかける」という意味で受け取るべきです。
 ぎりぎりの間合での気攻めに、にわか生じた「くずれ」「居着き」の勝機を逃さず渾身の一本を放つ。それが決まったら、更に気持ちを高め、残りの時間で「もう一本、勝負をかける」のだ、とおっしゃいました。
 まさに絶妙の教えです。この気持ちで相対(あいたい)せば無駄打ちを労することなく気迫に満ちた立合ができるというもの。
 「勝負」といえば、どうしても「歩合」が脳裏をよぎり、打打発止(ちょうちょうはっし)の乱打戦に堕する、と考えてしまいがちです。
 それゆえに審査においては勝負を度外視した本質剣道を目指そうとするのですが、それが即ち「つくる」という弊に陥ってしまう原因になっていたことに気づかせていただきました。

 しかし、その裏を返せば、日頃の稽古は自分の理想型が習い性なるまで修錬しなさい。小手先ばかりのなりふり構わぬ勝負稽古をしていては上達は望めないし、審査本番になって恰好をつけようとしても間に合いませんよ、という戒めでもあるのです。
 どうか皆さん、この永松先生の教えを生かし、今秋の審査には沢山の合格者が生まれますことをお祈りいたします。
 「つくらない」「一本勝負」ですぞ!。

つづく

*  三州会は、旧薩摩藩所領の三州(薩摩・大隅・日向)出身で関東在住の剣士を主とする稽古の会です。
 事典で「薩摩藩」を調べると、「明治維新の原動力となり、明治以降長く日本の政治を支配する薩摩閥を形成する…」となっています。
 しかし、この三州会は決して剣道界での派閥を形成するものではなく、「去る者は追わず、来る者は拒まず」の大らかな精神で運営されています。
 四半期ごと年4回行われる新宿剣連との合同稽古は、毎回盛会裡にとり行われています。
 次の稽古会は、来年1月21日(土)午後5時からです。こぞってご参加ください。

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プロフィール

新宿区剣道連盟

Author:新宿区剣道連盟
「井蛙剣談」への思い

 「井の中の蛙大海を知らず」と自覚しつつ
「井の中は誰よりも知っている蛙」に成り代わり書き進めてまいります
つたなき指導の一環とお受け止めいただければ幸いです
               真砂 威

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