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陽気な人びと 『逝きし世の面影』を読む「第二章」

その108
陽気な人びと
-『逝きし世の面影』を読む「第二章」-

 19世紀の中ごろ、日本の地を初めて踏んだ多くの欧米人が最初に抱いたのは、その国民はたしかに満足しており幸福であるという印象だった、と述べています。

♢ スミス
 「日本人は毎日の生活が時の流れにのってなめらかに流れてゆくように何とか工夫しているし、現在の官能的な楽しみと煩いのない気楽さの潮に押し流されてゆくことに満足している」

♢ ヒューブナー
 「封建制度一般、つまり日本を現在まで支配してきた機構について何といわれ何と考えられようが、ともかく衆目の一致する点が一つある。すなわち、ヨーロッパ人が到来した時からごく最近に至るまで、人びとは幸せで満足していたのである」

♢ パーマー
 「誰の顔にも陽気な性格の特徴である幸福感、満足感、そして機嫌のよさがありありと現れていて、その場所の雰囲気にぴったりと溶けあう。彼らは何か目新しく素敵な眺めに出会うか、森や野原で物珍しいものを見つけてじっと感心して眺めている時以外は、絶えず喋り続け、笑いこけている」

♢ リンダウ
 「日本人ほど愉快になり易い人種はほとんどあるまい。良いにせよ悪いにせよ、どんな冗談でも笑いこける」

♢ ディクソン
 「頭をまるめた老婆からきゃきゃっと笑っている赤児にいたるまで、彼ら群衆はにこやかに満ち足りている。彼ら老若男女を見ていると、世の中には悲哀など存在しないかに思われてくる」

♢ メーチニコフ
 「のべつまくなしに冗談をとばしては笑いころげる人足たちに見とれずにはおられなかった」

♢ ブラック
 「笑いはいつも人を魅惑するが、こんな場合の日本人の笑いは、ほかのどこで聞かれる笑い声よりも、いいものだ。彼らは非常に情愛深く親切な性質で、そういった善良な人達は、自分ら同様、他人が遊びを楽しむのを見てもうれしがる」

♢ クライトナー
 「日本人はおしなべて親切で愛想がよい。底抜けに陽気な住民は、子供じみた手前勝手な哄笑をよくするが、これは電流のごとく文字どおりに伝播する」
 「陽気の爆発は心の底からのものであって、いささかの皮肉も混じっていない」

また、日本人の陽気さだけでなく善良さについても言及しています。

♢ アンベール
 当時の横浜の海岸の住民について、
「みんな善良な人たちで、私に出会うと親愛の情をこめたあいさつをし …中略… 根が親切と真心は、日本の社会の下層階級全体の特徴である」

♢ ブスケ
 「彼らはあまり欲もなく、いつも満足して喜んでさえおり、気分にむらがなく、幾分荒々しい外観は呈しているものの、確かに国民のなかでも最も健全な人びとを代表している」

♢ バード
 馬で東北地方を縦断するという壮挙をなしとげるなかで、もう暗くなっていたのに、落とし物を一里も引き返し取りに行ってくれた馬子に対し何銭か与えようとしたのを、
「目的地まですべての物をきちんと届けるのが自分の責任だと言って拒んだ」と、無償の親切に感動した。

 そこで著者は、「善意に対する代価を受け取らぬのは、当時の庶民の倫理だったらしい」と述べています。

♢ ボーヴォワル
 日本を訪れる前にアジア諸国を歴訪していたのだが、
 「日本はこの旅行全体を通じ、歩きまわった国の中で一番素晴らしいと感じた」
 「住民すべての丁寧さと愛想のよさは筆舌に尽くしがたく、たしかに日本人は地球上最も礼儀正しい民族だと思わないわけにはいかない」

そして結論的に、

♢ モース
 「他国民を研究するにあたっては、もし可能ならば無色のレンズをとおして観察するようにしなければならない。とはいっても、この点で誤謬が避けられないものであるとするならば、せめて、眼鏡の色はばら色でありたい。そのほうが偏見の煤のこびりついた眼鏡よりはましであろう」
 「このような調査をおこなうには、対象に対する共感の精神を持たなければならない。そうしなければ、見落としとか誤解が多くなる」

との、モースの信念ともいうべき論及に対し著者は、
「これはむしろ今日の文化人類学の方法論に近い。われわれはこのような共感者に対しても、おなじく感謝を捧げねばならない」
と述べています。

 そのころの日本が楽園であったとはとても思えませんが、異邦人の目には、そこに根を下ろし暮らす人びとは、幸福に充ち満ちているように映ったに違いありません。

 今年も国連が定める「世界幸福デー(3月20日)」が近づいてきましたが、昨年の世界155カ国を対象にした幸福度ランキングで日本は51位でした。最も幸せな国とされたのはノルウェーで、2位はデンマーク、3位はアイスランドと北欧にひとり占めされました。

 この調査がどのように行われているのか存じ上げませんが、51位というのは先進国の中で最低です。今われわれが置かれている生活環境に鑑み、この評価は合点がいくものではありません。

 しかしながら、著者渡辺京二氏が再三いう「滅んだ古い日本文明」の中に、ふだんの穏やかな日々の営みを喜びに感じ、あるいは幸せと思える感性が退化してしまった、ことも含まれると考えるなら十分に納得できる話です。
つづく
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新宿区剣道連盟

Author:新宿区剣道連盟
「井蛙剣談」への思い

 「井の中の蛙大海を知らず」と自覚しつつ
「井の中は誰よりも知っている蛙」に成り代わり書き進めてまいります
つたなき指導の一環とお受け止めいただければ幸いです
               真砂 威

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