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「武道への回帰」、そのきっかけ

その104
「武道への回帰」、そのきっかけ
 前回、剣道三百有余年における紆余曲折の道について概要を述べました。
 戦前・戦中、武道とくに剣道は、国から優遇を受けることとなりました。
 これがいつしか戦争遂行へ向けた勢いに呑み込まれ、次第に戦技化(軍事武術化)の方向を歩む運命を辿ります。

 剣道の戦技化とは、すなわち「実戦即応型剣道」といわれるものであります。
 実戦即応型剣道とは、剣道で一番大切とされる、間合、攻め、機会などの理合をまったく度外視し、白兵戦よろしく、双方が構え合った立ち位置から一挙に突進して打ち込む、一撃必殺を狙うといったものです。
 本来の剣道とはほど遠い、味も素っ気もない殺伐としたものであった、であろうことは想像に難くありません。

 こうした国の政策による実戦即応型剣道の推進には、当時の剣道人とくに専門家筋の多くは違和の念を持っていたのです、が、当時の国情下では正面切って異を唱えることが出来ない状況にあったようです。

 詳しくは、その二十三「心すべきこと ①」(平成24年2月28日)、二十四「心すべきこと ②」(平成24年3月15日)参照のこと。
 
 そのようなことで戦後剣道は、GHQ(連合国総司令部)から特攻精神の権化であるかのような目が向けられ、剣道の活動は著しい制限を受け、学校や警察では完全に禁止となりました。
 そして、数年の空白期を置くこととなります。

 昭和27年(1952年)、国の独立回復とともに全日本剣道連盟(全剣連)が発足します。
 ようやく剣道の復活を果たしたものの、それは武道色を完全に抜き去った〝純粋スポーツ〟としての再出発でありました。

 詳しくは、その九十一「わが国の〝かたち〟をとりもどそう - 武道のすすめ - ③」参照のこと。

 すなわち刀を類推させる語句を一切削り去り、西洋スポーツに倣った競技様式に繕っての再出発であったのです。

 その甲斐あって剣道は、昭和30年(1955年)に国民体育大会の競技種目入りを果たします。
 ようやく一人前のスポーツとして世に認められた、と言ってよいでしょう。

 昭和39年(1964年)には東京オリンピックが開催され、柔道は五輪競技種目入りを果たします。
 その時代、剣道界で何気にただよっていた空気は、「柔道に続け」であったことは申すまでもありません。

 東京オリンピックを機に、剣道の国際競技化が急速に進み、その6年後の昭和45年(1970年)に、第1回世界剣道選手権大会(1WKC)が日本で開催されます。

 その東京オリンピックで剣道は、公開演武として参加いたしますが、この公開演武は期せずして、日本武道館を埋め尽くす諸外国の観衆から、「日本の武道」として絶大なる賞賛を浴びるのです。

 戦後、剣道は、武道としての矜恃をかなぐり捨て、純粋スポーツとして再出発したわけですが、ここに至り、諸外国勢の力強い後押しを受け、「武道への回帰」に向け軌道修正への舵を切る絶好のチャンスを得たことになります。

 一方それとは別に、識者や専門家の間からは、戦後、純粋スポーツとして再出発したことは止むを得ないとしつつも、徐々に、剣道の過度な競技傾斜化を憂う声が多く上がっていた、その矢先でもありました。
 
 折しも、東京オリンピックにおける諸外国からの賞賛は、「剣道の根元に立ち帰るべし」の機運を醸成する後ろ盾となり、「武道への回帰」へと思わぬ方向に進展することとなりました。

 全剣連では1WKC開催の翌年、昭和46年(1971年)に剣道のあり方や目的を明確に示すため剣道理念委員会が発足します。

 同委員会において、3年余りの審議を経て昭和50年(1975年)に「剣道の理念」と「剣道修錬の心構え」が制定されたことは前回述べたとおりです。

 さて、剣道を世界に普及させる意味合いの言葉として、よく「国際化」という言い方がされています。おそらく今まで誰もが何の疑念も抱かずに国際化という言い方で罷り通してきました。
 グローバリゼーションを是とする国際社会の中においては当然、何事も国際化すべきではありましょう。

 しかし単純に「剣道の国際化」と言ってしまえば、ややもすると剣道の何から何までが国際基準に依拠する話となりかねません。
 これでは剣道そのもの自体がグローバリズムの中に組み込まれ、わが国の伝統文化性が失われてしまう、という懸念が生じはじめたということでしょう。

 これには組織上の問題もあります。47年前、1WKC開催とともに国際剣道連盟(FIK)が設立されました。
 当時は17カ国・地域という少数の参加で行っていたものが、WKCの回数を重ねるごとに参加国が増え、今やFIKは50数カ国・地域が加わる大きな組織となりました。今後更なる加盟国の増加が見込まれます。

 今のところは日本が世界の剣道を主導している状況下にあることに変わりありませんが、日本発進の他競技の国際組織を見ると、決して楽観は許されぬと受け止めねばなりません。

 というような仔細で目下、全剣連では、剣道の国際化、ではなく「剣道の国際的普及」と表現するようになっております。

 さて、待ったなしで迫り来る2020年東京オリンピック・パラリンピックです。剣道は競技種目ではありませんが、剣道が日本を代表する身体運動文化、武道であることは広く世界に知られているところです。
 どうか皆さん、ともども粛々と精進道をあゆみつつ、おもてなし、の心をもって世界の人々を暖かくお出迎えしようではありませんか。
つづく
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新宿区剣道連盟

Author:新宿区剣道連盟
「井蛙剣談」への思い

 「井の中の蛙大海を知らず」と自覚しつつ
「井の中は誰よりも知っている蛙」に成り代わり書き進めてまいります
つたなき指導の一環とお受け止めいただければ幸いです
               真砂 威

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