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年の瀬にあたって

年の瀬にあたって
 本年11月8日、私は70歳の誕生日を迎えました。世間でいう「古希」です。辞書で古希を見ますと、[杜甫、曲江詩「人生七十古来稀なり」、70歳の称]となっております。が、先輩の先生方からは「まだまだ若い」と。依然剣道界では若輩者であります。

 古希を迎えるにあたり、ある人の薦めにより内館牧子さんの近著『終わった人』(平成28年1月1日発行、講談社)を読みました。
 私と同年代の内館牧子さんが綴る、団塊世代の会社人間がどのように人生の店じまいをするか、そのありさまをユーモラスに描いた小説です。
 物語の内容はともかく、今多くのわれわれ世代の胸中にわだかまっているものが余すところなく描き出されています。

 その巻頭に「定年って、生前葬」という言葉がいきなり飛び込んできてド胆を抜かれます。「明日からあり余る時間の中に身を置かねばならない。死ぬまでずっとだ」と。なるほどです。

 そう思う反面、「出勤しなくていいのだ」と気づき、解放感にひたる時を過ごす。
 しかし、そのホンワカとした気持ちも束の間、「ついに俺は平日にスーパーに行く男になってしまったのだ」とわが身を怨めしく思ってしまう。

 そうして、俺を見送った会社のヤツとてどっちみち「残る桜も散る桜」だ、あがくより上手に枯れる方がずっとカッコいい、と、いちおう悟る。

 退職の挨拶状には「晴耕雨読の日々を送っております」などと、いかにも悠々自適な老後を送っている体の決まり文句を綴りながらも、「俺はまだまだやれるのに」と往生際の悪さがもたげてくる。
 こういう呻吟の日々を過ごすのが一般的な定年退職者かと思われます。特に企業戦士として過当な競争を生き抜いて来た団塊世代の人達にとって定年は、生前葬そのものなのでしょう。

 「世代交替と無縁でいられるヤツらは天才よ」、「植木屋とか建具職人とか、特殊な技術を身につけている者は幸せだ。トコロテン式に定年退職させられることもなく、年齢と共に円熟の域に入ったりする」と、今まで見下していたような人達のことが逆に羨ましくなったり、ホワイトカラーへの自虐の念がめらめらと。

 この『終わった人』、ここまで読んでハッと思い当たりました。
 私は、還暦の歳、60歳で警察を定年退職いたしました。あれから10年。
 剣道というものは、ほんとうに有り難いものです。定年というものがなく、いや、かえって退職した後の方が自由三昧、心底から稽古に打ち込める日々が与えられられるのですから。

 現職の時には、休日など家族に気を遣いながら恐る恐る家を出て行っていたのがウソのよう、今や365日いつでも大手を振っての剣道三昧。カルチャースクールや老人大学に居場所を求める退役サラリーマンとはひと味違った第二の人生が待っていました。

 この10年は、私の70年の人生のうちで一番充実した幸せな10年だったと言えましょう。
 「終わった人」ではなく、現役感でいられる、この有り難さを、今しみじみ味わっております。
 さて、これから先、どのような余生になるのでしょうか。還暦のときには何も感じなかったのですが、10年経った今、ちょっと不安が先立っていまます。

 身体の不調は所を選ばず押し寄せ、上は白内障から下は前立腺肥大まで、そのほか右肩、腰、右膝の左足首の痛みなどが、一過性を通り越し慢性化してきました。
 日常生活では、立ったまま靴下を履こうとすればふらつき、あらたに動作を起こすときには、つい「よいしょ!」のかけ声が。
 稽古においては蹲踞がなかなか納まらず前後左右によろよろと、また目の方は、近視老眼とも頓(とみ)に進み、体力の衰えも著しいものがあります。万事休す。

 ですが、よくしたもので、それら不調や衰えとともに、今まで見えなかったものが観え、また、今までは見過ごしていたことで気づいたこと、大げさに言えば「悟った」ことも多くあり、「老いというのもまんざら捨てたものではない」という心境にもあります。
 ということで〝なま悟り〟ではありましょうが、そこが井蛙たる所以、年明けにはその一部始終をはき出させていただきます。

 本年も残すところあと僅かとなりました。今年は、世界的にいろいろと衝撃的な出来事があった年でしたが、皆様方にとってどのような1年だったでしょうか。
 どうか皆様方におかれましては、この行く年に思いをいたし、来る年に思いを馳せ、ご家族お揃いで輝かしい新年をお迎えください。
平成28年12月29日

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新宿区剣道連盟

Author:新宿区剣道連盟
「井蛙剣談」への思い

 「井の中の蛙大海を知らず」と自覚しつつ
「井の中は誰よりも知っている蛙」に成り代わり書き進めてまいります
つたなき指導の一環とお受け止めいただければ幸いです
               真砂 威

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