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気剣体一致を創る

その九十四
気剣体一致を創る
 『剣道時代』12月号(10月25日発売)の特集「じつはあった気剣体一致の要領」
に私の記事が掲載されました。元新宿剣連会員で教士七段の今津久雄氏が
塾長をつとめる「誠道塾」(荒川区東日暮里)において、今津氏の取材協力を
得て編集されたものです。取材は9月27日に行われましたが、その元となった
私の原稿が手元にありましたので、若干本誌とことなるスタイルですが、ご
参考まで、ここに記させていただきます。

1.無自覚時代
 私が剣道を始めたのは中学校に上がり剣道部に入部してのことです。
昭和34年ですから、57年前です。ほとんど無自覚的にクラブ活動として参加
していたに過ぎませんでした。
 その後、高校から大学と進み、学業をそっちのけに取り組みましたが、剣道
を理論的に考えることは余りありませんでした。
 兵庫県警に入ってからも「気剣体一致」についての理解は、気と剣と体がよく
調和がとれ、一体となって働くことによって有効打突の要件を満たす、という程度
の幼稚なものでした。
 しかし、身長に恵まれ筋パワーと持久力だけは並以上に持ち合わせていたので、
練習をがむしゃらにこなすことによってそれなりの地力をつけ、なんとか選手生活
を全うすることができました。

2.良書との出合い
 約13年間の選手生活を終え、昭和59年、37歳のとき、兵庫県警の剣道指導者
になりました。自ずと専門家としての自覚も芽生え、本格的に基本を見直すように
なっていきました。それまでは先述のとおり、一応の「気剣体一致」は心得ていた
つもりではありましたが、なんとなくバランスが悪く、力まかせ、スピード頼みの
ぎごちない自分を感じていました。
 そんなある日、図書館で偶然に*中井正一著『美学入門』(朝日選書)という書が
目にとまりました。常日ごろ剣道の修行と「真善美」を重ね合わせて考えていたもの
ですから、一瞬「美学」という文字に反応を示したのかもしれません。
 これが、まさに「美学と上達論の合一」という内容のものでありました。
特に、次の一節には膝を打つ思いで読みました。

 例えば、水泳のとき、クロールの練習をするために、写真でフォームの型を
何百枚見てもわかりっこないのである。長い練習のうちに、ある日、何か、水に
身をまかしたような、楽に浮いているようなこころもちで、泳いでいることに気づ
くのである。その調子で泳いでいきながら、だんだん楽な快い、すらっとしたこころ
もちが湧いてきた時、フォームがわかったのである。初めて、グッタリと水に身を
まかせたようなこころもち、何ともいえない楽な、楽しいこころもちになった時、
それが美しいこころもち、美感にほかならない。自分の肉体が、一つのあるべき
法則、一つの形式、型を探りあてたのである。自分のあるべきほんとうの姿に
めぐりあったのである。このめぐりあったただ一つの証拠は、それが楽しいという
ことである。しかもそれが、事実、泳いでいて速いことにもなるのである。無理な
力みや見てくれや小理屈を捨て去って、水と人間が、生でぶつかって、微妙な、
ゆるがすことのできない、法則にまで、探りあてた時に、肉体は、じかに、小理屈
ぬきに、その法則のもつ隅々までの数学を、一瞬間で計算しつくして、その法則
のもつ構成のすばらしさを、筋肉全体で味わうのである。音楽は耳を通して、肉体
に伝えるのであるが、この場合は、指先から足までの全体の動きで、全身が響き
あっているのである。これがわかったとき、これまでの自分は、他人みたいなもの
なのである。自分が本当の自分にめぐりあうと、そうなってくるのである。
 このように考えると、クロールまでが美学に関係をもってくるのである。
…中略…
 ところが、この法則は、自然の法則のように宇宙の中にあった法則であろうか。
これは人間と水との間に、人間の創りだした新たな法則であって、自然の法則ではない。
人間がこの宇宙の中に、自然と適応しながら、自分で創造し、発見し、それを固め、
そして発展させていく法則である。これを「技術」というのである。

 「これだ!」一生かかって完璧をめざし、誤っては正され、誤っては正される
「技術の秩序づくり」、これこそが自分に課せられた修行であると考えたのです。
 この『美学入門』との出合いが私の剣道修行に大きく影響を与えました。
「気剣体一致を創る②」へつづく

*中井正一(なかい まさかず)
 明治33年~昭和2年、日本の美学者、評論家、社会運動家。中井美学と呼ばれる
独自の美学理論を展開した。
その理論は極めて広範多様な対象への実践的な視点で知られる。
平成28年12月5日

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新宿区剣道連盟

Author:新宿区剣道連盟
「井蛙剣談」への思い

 「井の中の蛙大海を知らず」と自覚しつつ
「井の中は誰よりも知っている蛙」に成り代わり書き進めてまいります
つたなき指導の一環とお受け止めいただければ幸いです
               真砂 威

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