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新年度を迎えるにあたって

                  新年度を迎えるにあたって
 このたび未曾有の大惨事を前に、何もできないもどかしさと無力感にさいなまれる毎日です。お亡くなりになられた多くの方々に、衷心より哀悼の意を表させていただきますと同時に、被災された皆様方に心からお見舞い申し上げます。

 この大災害の下、剣道界では各種行事が中止または延期やむなきに到っております。また新宿区剣道連盟の会員各位におかれましても、しばらくは活動の制限を余儀なくされますが、この震災を我が事と思いなして、みんなが力を合わせ、非常事態を乗り越えたいものです。 さて、新宿区剣道連盟では、昨年の秋にホームページを開設いたしました。開設にあたっては若手有志のひとかたならぬ努力があったわけですが、このホームページ開設をきっかけに若手グループの結束のようなものが出来つつあり、大変喜ばしいことと思っております。

 また、ホームページ開設に際して、「当連盟の基本理念を掲げよ」という声におされ、僭越ながら上掲させていただきました。

 それから半年、またこのたび「剣道について何か書け」との声を上げていただきました。思いますれば、私どもが新宿剣連の会長に就かせていただいてから3年近くになります。しかしながら、十分に稽古や大会等の行事にも参加できず、常日頃から会員の皆様に大変申し訳なく思っておりました。そんな矢先のお話なので、これまた僭越とは知りながらお引き受けすることとした次第です。

 ここに掲載させていただく内容は、決して由緒正しき理論に基づいたものではなく、あくまでも市井の一剣士、真砂威の管見を述べさせていただくものに過ぎません。つたなき指導の一環とお考えいただければ幸いです。

 「井の中の蛙大海を知らず」と自覚しつつ、「井の中は誰より知っている蛙」になり代わり、『井蛙(せいあ)剣談』と名づけ書き進めてまいります。

                        *
                      基本理念
 国民のモラル低下が憂慮されるようになって久しい。とくに近年は、その度合いが急速となり、「崩壊」とまで言われだした。見るに堪えないあさましい風潮が世の中を覆っている。
 かつてわが国は「道徳の国」とよばれていた。
 わが国が近代国家の建設をめざす、幕末から明治維新にかけて、数多くの外国人が来日したが、彼らが一様に賞賛するのは、日本人の道徳心の高さであった。
 文明の遅れはあったとしても、人心の洗練度は高みをきわめており、西欧人が一目置かざるを得ない威厳を示していた。
 わが国に対し強硬に開国を迫ったペリーも、日本の文化水準と能力の高さを十分認めたうえで交渉に当たったという。
 最初の駐日総領事の米外交官ハリスも、日本人の質素さ、正直さ、態度の丁寧さについて、「他の国にはみられない」と日本人のモラリティーを誉めたたえている。
 また、明治維新を目前にして幕末、咸臨丸に乗って太平洋を渡航しアメリカに到着した武士たちに、詩人W・ホイットマンは感銘を受け、「ブロードウエイの行進」という詩を寄せた。
 ホイットマンは、この武士たちのことを2つの言葉で表現した。ひとつは「courteous(
礼儀正しく思いやりのある)」、もうひとつは「impassive(超然とした)」である。
 このように日本人に接した外国人は、国内外を問わずみな同じような賛嘆のことばを述べている。
 やがて日本人は、これらの徳性と固有の勤勉性を生かして西欧列強に伍する近代国家建設をなし遂げる。

 150年ほど前のことである。しかし、民心をこの時代に戻すことは難しい。
 今われわれ剣道人がやるべきことは、一人ひとりが日々の稽古において真に「道」を求めることである。そのうえで交剣知愛の和が広まれば、やがてこの国が立ちかえる。
 その一つの道すじとして、次の3項目を基本理念として掲げるものとする。

     一 利を追わず理にしたがう
     一 ぶれない体軸と太刀筋
     一 ひるまない身体と心
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井蛙剣談 その一
                  一人ひとりが道を求め
 基本理念は、本来あるべき日本人の心根を述べ、それを目指すための剣道修業の要諦として三本柱をお示ししたものです。井蛙剣談の第一談として、この基本理念について少々説明を加えてみたいと思います。

 まず一番目の「利を追わず理にしたがう」は、目先の利ではなく理に適った立合でもって日頃の稽古に励むことが肝心であるということです。ややともすれば相手の打突部位を打突するという、目先に焦点を当て過ぎるため、気が急ぎ、かえって目的を果たせない。それどころか姿勢を崩し、返り打ちにあってしまうことになりかねません。一触即発の間合に接し、おのずから生じる〝相手の崩れ〟という成り行きにしたがって、一太刀を浴びせることを目標に修錬いたします。これは相対関係における剣の理法の一端です。この理法は非常に奥深いものがありますが、まず身近には上手(うわて)に稽古をお願いし、剣と剣の交わりの中で直に心気に触れることが大切です。その理合については、日本剣道形に学ぶのが手始めです。

 二番目は「ぶれない体軸と太刀筋」。「体軸」とは身体の中心軸のことで、頭のてっぺんから体の中心(芯)を通って地球の中心に向かって貫く一本の筋(軸)です。これは修錬によって自覚し、そしてつくり上げるものです。「太刀筋」は、現代剣道においては竹刀の上げ下げ(振り)の通る道と言えるかもしれません。地球上にはあらゆる剣技がありますが、日本剣道の特色は双手(諸手)で刀を持つ技法にあると言えましょう。他国の剣技は片手で使うものが主であり、刀を使う技術の巧拙は、いきおい筋パワーの多寡に比例してしまいがちであると考えられます。これに反し日本人は、筋パワーに依拠することをよしとせず、刀を両手で把持し、身体全体で使う道を選びました。双手で柄を把持することは、両手錠をかけられたごとく、身動きを不自由にさせます。そのような前提条件のもと、剣技の上達には〝身心一如〟精神的にも深化したものが求められます。

 三番目の「ひるまない身体と心」は、余計な説明はいらないと思います。竹刀を構え相対峙しての攻防にあたっては、色々な気持ちが交錯しますが、気がくじけたりおじけつかないように心身を鍛練しなければなりません。

 以上、この三本柱を新宿剣連の基本理念としますが、これは「剣道は剣の理法の修錬による人間形成の道である」とした全剣連の『剣道の理念』を大前提とするものです。

 新宿剣連では、この『剣道の理念』を押し戴きながらも、あくまでも床場における剣道上達論として三本柱を掲げました。この基本理念を守り日々の稽古に励むことが上達の方途であると申し添えます。

 それぞれの各論については、その場その時の時宜をとらえて述べていきたいと思います。
                                      平成23年3月26日
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Author:新宿区剣道連盟
「井蛙剣談」への思い

 「井の中の蛙大海を知らず」と自覚しつつ
「井の中は誰よりも知っている蛙」に成り代わり書き進めてまいります
つたなき指導の一環とお受け止めいただければ幸いです
               真砂 威

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