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体軸について

その101
体軸について
 ひとつ皆さん方にお伺いします。日常生活において自分の身体の中心線をどのように意識しておられるでしょうか。
 中心線は正中線ともいわれますが、実はこの中心線の存在が非常に大切なのです。

 正中線とは、眉間、喉元、鳩尾そして臍下丹田といった身体の中央を通るひと筋ですが、この中心に大きな力を宿しているといわれています。
 中心線は、けっして物質として存在するものではありません。X線を照射して見えるものでも、また解剖して目にすることもできませんが、武道、殊に剣道では、この中心線を常に意識して鍛え、「体軸」として確立させるということが重要とされています。

 双方が相(あい)対峙し竹刀を構え交差させたとき、お互いの剣先は自ずと中心を取ろうとさぐり合いとなります。
 しかし、彼我の中心を貫く線は一筋しか通っていない、という事実をまず認識しなければなりません。

 一筋しか通っていない中心線に、身幅3cmほどの竹刀と竹刀が交差するのですから必然、中心を取るせめぎ合いとなります。
 ところが多くの場合、この中心の取り合いがまるで虚しい所業に終始し、交差した竹刀の刀身を双方が左(あるいは右)に押し合いへし合い、力ずくの角逐となってしまうのです。

 このような力ずくのせめぎ合いでは、カタチの上ではどちらかの剣先が中心を取ったとしても、それは単なる「虚像」にしか過ぎません。
 もしそのとき一方が、「やめた」とばかり、パッと力を抜いたとしましょう。すると片方は、まるで梯子を外されたように、中心を取っていたはずの剣先は勢い余って大きくブレ、全く的外れの方角へ向いてしまいます。この的外れた剣先の在り処こそが「実像」なのです。

 本来、中心を取るには、鎬部をつかい刀身を相手の中心方向に擦り込ませるのを定法とします。が、刀身を横(右あるいは左)方向に押せば剣先がブレて当然です。
 刀身交差の局面に囚われるあまり全体の利を見失う、まさに「王より飛車をかわいがり」と揶揄される〝へぼ将棋〟の類となってしまうのです。
 この、〝へぼ〟な渡り合いでまかり通そうとするのが、巷にやつす剣士の通弊といえましょう。

 僭越ながら申し上げますが、新宿剣連の皆さん方の多くは小生と稽古中、面を打ってくるとき、中心を真っ直ぐ下ろすことができず、竹刀もろとも身体が左(あるいは右)に大きく外れ、重心を失ってしまう経験をされたかと思います。
 これまさに先述したブレの帰結であります。

 小生の所為は、相手の技を空打へと導くものであり、言わば意図的に創り出した勝負なし「引き分け」であります。
 小生はこれを
「無勝負の位」
と名付けております。

 「相打ち」の境界から一歩進み、*針ヶ谷夕雲が称えた「相抜け」へ向かう途上とでも申しましょうか。
 体軸を鍛え、竹刀に血を通わせ神経を行きわたらせる修錬を経た上での位であり、「利」であると言わせていただきます。
 また、それは攻防における一つの「理」であるとも考えるものです。理外ではない、上達論と勝負論を合一した正理に通ずると。

両手の掌を合わせたり、指を組み合わせるという行為は、多くの宗教の祈りに見られます。そして、その合わさった両手の接点ですが、顔の前であるにしろ胸の前であるにしろ、必ず正中線上に位置することも共通しています。そして、合わせられた手は些かも正中からずれることはありません。座禅で印を結ぶ左右の親指の接点も同じです。もし、合わさった接点が中心から外れれば、心地わるく、祈りもそぞろとなり、また心の平安も不動心も無きものになってしまいます。

 体の中心に左右の掌が合わさっていることこそが、精神的に平静をもたらし、しかも身体に無上の力を宿す源ともなるのです。
 翻って竹刀を持つ手も合掌ととらえれば、剣道における中心力というものを知る手がかりになるかと思います。
腕力ではなく、中心力を鍛えよ!
 「理外の理」であるといわれる勝負事を、筋道立った勝利の理へと進化させることが、この中心を鍛えることによって可能になると信じるものです。

 このことについては先の『剣道時代』(平成28年12月号)「じつはあった気剣体一致の要領」の本文では取り上げられていません。同誌末尾の「編集後記」に編集者の感想が述べられておりますので、合わせてご覧ください。

* 針ヶ谷 夕雲(はりがや せきうん)1592年(文禄元年)? - 1662年(寛文2年)。日本の江戸時代初期の兵法家、剣客。無住心剣流剣術の開祖。「相抜け」で知られる夕雲は、勝負について「多クハ只畜生心ニテ、己レニ劣レルニ勝チ、マサレルニ負ケ、同ジャウナルニハ相打ヨリ外ハナクテ、一切埒ノアカヌ所ノアルゾト云事ヲ」(『夕雲流剣術書』)と述べている。
つづく
平成29年5月11日

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プロフィール

新宿区剣道連盟

Author:新宿区剣道連盟
「井蛙剣談」への思い

 「井の中の蛙大海を知らず」と自覚しつつ
「井の中は誰よりも知っている蛙」に成り代わり書き進めてまいります
つたなき指導の一環とお受け止めいただければ幸いです
               真砂 威

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